一次、二次マイクロプラスチックとは?
最近、「マイクロプラスチック」という言葉を耳にすることは多いのではないでしょうか。マイクロプラスチックとは、直径5 mm以下のプラスチックの破片のことをいいます[1]。 マイクロプラスチックは海洋生物の中にたくさん見つかっており、その健康被害に対する懸念は高まっています。このようなマイクロプラスチックですが、実は二つの種類があることをご存じですか?
マイクロプラスチックには一次マイクロプラスチックと二次マイクロプラスチックがあり、これらは発生源に違いがあります。一次マイクロプラスチックは、元々5 mm以下のサイズで製造され、例えばプラスチック製造の中間材料であるレジンペレット(図1)や化粧品原料のスクラブ剤などが挙げられます。一方、二次マイクロプラスチックは大きいサイズのプラスチックが環境中に放出された後に、物理的または光化学的に分解されて小さくなったプラスチックの破片を指します(図2)。
一次、二次マイクロプラスチックの危険性
マイクロプラスチックには二つの種類があることが分かりましたが、種類によって危険性は変わるのでしょうか?
マイクロプラスチックの危険性として、酸化ストレスによる生体へのダメージが挙げられます。この酸化ストレスは、マイクロプラスチックが吸着した有害物質を体内に運ぶこと及び物理的に生体内の組織を傷つけてしまうことに由来します[1]。
大きいサイズのプラスチックが分解されてできる二次マイクロプラスチックは、一般的に球状の一次マイクロプラスチックと比べて不規則な形状であるため、表面積が大きく[2]、有害物質をより吸着しやすいです[3]。また、不規則な形状のマイクロプラスチックは生体中の蓄積量が多くなることが知られています[4]。したがって、二次マイクロプラスチックは一次マイクロプラスチックよりも酸化ストレスを引き起こしやすく、危険性が高いと考えられます。
一次、二次マイクロプラスチックの対策
一次、二次マイクロプラスチックの発生源に着目すると、環境中のマイクロプラスチックの数を減らしやすいのは、製造及び販売を直接規制できる一次マイクロプラスチックだということが分かります。実際に、2023年9月の欧州化学機関(ECHA)のマイクロプラスチック規制において、EU市場でのマイクロプラスチック、マイクロプラスチックが意図的に添加された製品及び使用時にマイクロプラスチックを放出する製品の販売が禁止されました[5] 。これは一次マイクロプラスチックの規制にあたります。
一方、環境中で発生する二次マイクロプラスチックは直接規制することができません。したがって、二次マイクロプラスチックを減らすためには、プラスチックの環境中への放出及び分解を未然に防ぐ必要があります。そのために、プラスチックの使用量を減らす「リデュース」、プラスチックをそのまま再利用する「リユース」及びプラスチックを資源として再生利用する「リサイクル」の3Rはとても重要です。加えて、一度環境中に流出してしまったプラスチックを回収する四つ目のR、「リカバリー(回収)」もまた重要な役割であると考えられます。我々はリカバリーに焦点を当て、今後もビーチクリーンや回収装置により二次マイクロプラスチックの発生源となる大きいサイズのプラスチック回収に取り組んでいきます。
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参考文献
[1] Alimba, C.G., Faggio, C., 2019. Microplastics in the marine environment: Current trends in environmental pollution and mechanisms of toxicological profile. Environmental Toxicology and Pharmacology 68, 61–74.
[2] Xia, B., Sui, Q., Du, Y., Wang, L., Jing, J., Zhu, L., Zhao, X., Sun, X., Booth, A.M., Chen, B., Qu, K., Xing, B., 2022. Secondary PVC microplastics are more toxic than primary PVC microplastics to Oryzias melastigma embryos. Journal of Hazardous Materials 424, 127421.
[3] 雪岡 聖, 田中 周平, 鍋谷 佳希, 鈴木 裕識, 藤井 滋穂, 高田 秀重, 2018. 水環境中におけるマイクロプラスチックの粒径に着目した微量有機汚染物質の吸着特性. 土木学会論文集G(環境),74, III_527-III_535.
[4] Qiao R., Deng Y., Zhang S., Wolosker M. B., Zhu Q., Ren H., Zhang Y., 2019. Accumulation of different shapes of microplastics initiates intestinal injury and gut microbiota dysbiosis in the gut of zebrafish. Chemosphere, 236, 124334.
[5] European Chemicals Agency. “Microplastics.” ECHA, 2024, echa.europa.eu/hot-topics/microplastics 閲覧日:2024年9月1日.
著者:溝上 藍、石山 翔午、井上 智晶、中國 正寿