回収困難な場所にある海洋ごみの効率的な回収技術の開発

海洋ごみは海岸よりも海上・海底に放置されています。

これらの海洋ごみは回収が困難なため、放置され続けてきました。

私たちは、今まで放置されていた場所にあるごみの効率的な回収技術開発に挑戦しています。

回収装置1号機

1号機は、回収装置を海に設置し、海上に浮いているごみを網で捉え、引き上げ、回収することを想定した回収装置です。

最初の実証実験ということもあり、全長5mという簡易的な装置を使われていない大きな球ブイ・網・ロープを手作業で縫い合わせ、製作しました。

実証実験の結果として、一号機で海洋ごみ回収はできず、回収量0で引き上げました。

一号機での実証実験で判明した課題は以下の通りです。

・5mではカバーできる範囲が小さい。

・網にかかっても捕獲できず、リリースされる。

・球ブイ間のロープが弛んでしまい、海面を流れるごみが通り過ぎる。

・設置ポイント付近にごみが無かった。

回収装置2号機

2号機は、海洋ごみが溜まるHOT SPOT海岸の前に設置し、潮流や風等の自然の漂着エネルギーを利用することによるごみ回収を想定した回収装置です。

1号機とは設置ポイントを変え、海洋ごみが溜まるHOT SPOT海岸前に設置しました。

1号機の課題を踏まえ、以下のように装置を改善しました。

・全長は20m

・球ブイではなく紐に通す紐ブイを使用

・装置中央にごみを捕獲する回収ポケットを製作

・回収ポケットの容量は0.3m3

20日間設置して、回収できた海洋ごみはプラ破片6個という結果になりました。想定通りの回収結果にはなりませんでしたが、2号機の実証実験で判明した課題は以下の通りです。

・紐ブイと紐ブイの間に少しスペースが生まれてしまったため、ごみを堰き止められなかった。

・回収装置にごみが入った条件と時期がわからなかった。

・中央の回収ポケットの入り口や容量が小さすぎた。

・Iの字設置のため、中央の回収ポケットに誘導する力が弱かった。

回収装置3号機

3号機は、2号機と同じポイントに設置しました。

2号機から装置自体を改善し、PDCAのCを強化し、回収ポケットに入るタイミング・条件調査に力を入れました。

2号機の課題を踏まえ、以下のように装置を改善しました。

・3Dモデリング図面導入。

・全長は30m。

・紐ブイを継続使用し、紐ブイ間の間隔を狭める。

・中央回収ポケットの容量は9m3。

・漂流ごみを中央に誘導するために、回収装置をIの字設置ではなく、若干Uの字に設置。

・入口の浮力確保のために竹と卵ブイを使用。

2号機の調査課題から、以下のように実証実験を改善しました。

・対象HOT SPOT海岸の漂着ごみ量の変化を記録するため、3個の定点カメラで1時間毎のタイムラプス撮影。

・回収ポケット内の海洋ごみ捕獲状況記録のため、日々の水中ドローン動画撮影。

・Windy.comでの対象HOT SPOT海岸のマクロデータ取得(潮流・風・波・水温・潮汐・天候etc…)

20日間設置して、回収できた海洋ごみはプラ破片8個という結果になりました。想定通りの回収結果にはなりませんでしたが、3号機の実証実験で判明した課題は以下の通りです。

・実証実験期間中に漂流しているごみ量の少なかった。

・冬の透明度と海水温の低さから浮遊物が少なかった。

・季節による風向の変化を把握していなかった。

・回収装置を潮流が外れている場所に設置していた。

・浮力確保のため竹で浮かせたが、逆に入口を妨げるように見えた。

・海面のブイを繋ぐロープとロープの間が沈んでいてごみを堰き止める力が弱かった。

・Uの字の角度が足りず、中央の回収ポケットに誘導する力が弱かった。

・日々の水中ドローンで捕獲海洋ごみを確認できず、マクロ・ミクロデータとの相関関係の調査ができなかった。

回収装置4号機

4号機では、

海洋アドバイザーである内海漁業協同組合の森組合長、

サーフライダーファウンデーションジャパン

( https://www.surfrider.jp/ )、

インフルエンサーで社会活動家の竹中さん

( https://www.instagram.com/takenakashun/ )、

若手映画監督の簾さん

( https://www.instagram.com/s.hayato.mg/ 

と協働し回収装置の実証実験を開始しました。

実証実験開始の様子は動画で発信しました( https://www.instagram.com/p/CtOe2_QNQVG/ )。

多くの人に支えられ、無事20日の実証実験を完了することができ、約1.5kgの海洋ごみの洋上回収に成功することができました。

4号機の成功要因

・夏と冬の季節風の変化により、設置ポイントのごみ漂流量増加。

・設置ポイントの変更により、海洋ごみが流れてくるルート上に設置。

・3号機よりも角度を鋭角に変えたことにより、真ん中の回収ポケットへ海洋ごみが流れる動線確保。

4号機の課題

・今回、ごみ以外の浮遊物も多く回収しました。例えば、海藻、流木、クラゲです(魚の回収はありませんでした)。自然物とごみの割合は8:2ほどで自然物の方が多かったです。可能な限り海洋ごみのみを回収できるような装置を目指していきます。

・回収量が少ないので回収量を増やせるように、設計改善と環境条件を引き続き調査して行きます。
・他の場所でも展開可能な回収装置にするために、設置条件・回収条件・環境条件を引き続き調査していきます。

・装置性能と設置作業量のコストパフォーマンスの最大化の改善を引き続き行っていきます。

回収装置5号機

5号機では、オペレーションの効率化を軸に改善をしました。2号機の実証実験では6時間以上かかっていた設置(撤去)は、全体のフローの見直しと無駄を省くことで、1時間ほどで設置を完了することができるようになりました。

回収量は4号機よりも下がってしまう結果となりましたが、観測途中の季節風の変化や取り所の限定をする必要性をより実感した結果となりました。

観測期間20日間のうちに、一度入っていた海洋ごみが再度出てしまっていたことが確認されたので、再流出を防ぐ設計や設置を考えていきます。