河川ごみは「いつ」流れてくる?~5回の実証実験から見えてきた、雨と河川ごみ回収量の関係~

   

井上 智晶、室谷 雄作、石山 翔午、谷本 早紀、中國 正寿

雨が降ったあと、川の水面をペットボトルや食品容器、ポリ袋などが流れているのを見かけたことはないでしょうか。私たちクリーンオーシャンアンサンブルは、海へ流れ出る前のごみを河川で回収するため、河川ごみ回収装置「kawasemi」を使った実証実験を続けています[1]。

実際に川で回収を繰り返していると、ある疑問が生まれました。

図1 河川ごみ回収装置kawasemi003(最新型)

そこで私たちは、2025年春から2026年初夏までに行った5回の実証実験をもとに、河川ごみの回収量と、雨や風、気温などの自然環境との関係を調べました。

今回分析したのは、香川県高松市の詰田川で実施した第2回から第6回までの実証実験です。
春、初夏、夏、秋、冬と異なる季節で実証を行い、分析対象となった回収日数は合計23日間(装置設置期間:合計28日)。回収した河川ごみは、水切り後の湿重量で116.30 kg。1日あたりでは平均5.06 kgでした。
ただし、毎日同じ重量を回収できたわけではありません。
少ない日がある一方、第6回実証実験では1日で15.15 kgを回収した日もありました。

図2 詰田川の位置と河川ごみ回収装置の設置場所

私たちが知りたかったのは、この差がなぜ生まれるのかということです。

そこで、回収量だけでなく、気象庁が公表しているデータ(降水量、降雨時間、風向・風速、気温、湿度、潮位差等)と、回収装置に設置したロガーから得られたデータ(水温、水圧等)を整理いたしました。

河川での実証実験は、実験室のように条件をそろえることができません。
雨の日もあれば、風の強い日もあります。海に近い場所に設置していたこともあり、川の流れや水位も変わります。装置を設置し、ごみを回収し、重さを量り、気象や河川のデータと照らし合わせる。こうした地道な作業を繰り返しながら、少しずつ「どのようなときに河川ごみが多く流れるのか」を読み解いてきました。

一番はっきり見えたのは「雨」

分析した項目の中で、河川ごみの回収量と最も明確な関係が見られたのが雨でした。
特に、回収直前12時間に降った雨の量が多いほど、河川ごみの回収量も多くなる傾向が確認されました。
また、直前24時間のうち、雨が降っていた時間が長いほど、回収量が多くなる傾向も確認されています。直前12時間の降水量と回収量の相関係数はr=0.747でした。

図3 回収前12時間の積算降水量と1日当たり回収量との関係

相関係数とは、二つのデータがどの程度一緒に変化しているかを示す数値です。今回の結果からは、少なくとも私たちが実証を行った23日間では、「雨が多いときほど、河川ごみの回収量も増える」という関係が見えてきました。

もちろん、「雨が降れば必ずごみが増える」と言い切ることはできません。
まとまった降水があった日のデータは限られており、この関係を定量的に評価するには、さらにデータの蓄積が必要です。

ただ、雨によって川の流量が増えたり、道路や水路、川岸などにとどまっていたごみが雨水によって川へ運ばれたりすることが、回収量の増加に関係している可能性があります。実際に、河川の流量増加に伴ってプラスチック片の輸送量が急激に増大し、年間の総輸送量のうち質量ベースで84.1%が出水時に集中して流出すること[2]や、出水に伴い川岸や砂州の植生などにごみが堆積・捕捉されやすくなること[3]が、他河川の現地調査でも裏付けられています。

私たちにとって、この結果はとても重要でした。

これまで河川ごみ回収というと、「どうすればもっと多くのごみを捕まえられるか」という装置そのものの性能に目が向きがちでした。
しかし今回の結果から、装置だけではなく、「ごみが多く流れるタイミングを知ること」も、河川ごみ対策には重要なのではないかと考えるようになりました。

他の研究でも示されている「雨」の影響

降雨と、川を流れるプラスチック量との関係については、他の研究でも同様の傾向が報告されています。

京都市内の高野川を対象とした2024年の研究では、降雨の開始から終了後まで河川水をサンプリングし、雨水流出がマイクロプラスチックの動態に与える影響を調査しています[4]。調査された三回の降雨イベントでは、総雨量が6 mm(弱雨)、24 mm(中雨)、52 mm(豪雨)と規模が大きくなるにつれて、河川内を流出したマイクロプラスチックの総質量も概算値で0.5 kg、19.8 kg、そして35.0 kgへと増加することが実証され、総雨量とマイクロプラスチックの流出負荷量との間に強い相関があることが示されました。

さらに興味深い学術的知見として、流出するマイクロプラスチックの「濃度」は、雨量そのものよりも、雨が降る前に何日間晴天が続いたかに強く依存することが明らかになりました[4]。晴れの日が長く続くほど地表に大量のプラスチック微粒子が蓄積されるため、その後に降る雨は、降り始めの段階で蓄積したごみを一気に河川へ押し流す「初期流出(ファーストフラッシュ)現象」を引き起こし、一時的に極めて高い濃度を記録するのです。

対象となるごみの大きさや河川、調査方法は私たちの実証とは異なるため、単純に同じものとして比較はできません。
それでも、降雨が河川を通じたプラスチックの移動に大きく関わっている可能性を考えるうえで、私たちの結果と共通する興味深い知見です。

「どれだけ回収するか」から「いつ回収するか」へ

今回の実証実験から、私たちは一つの新しい可能性を感じています。

もし雨の量や降る時間から、河川ごみが増えるタイミングをある程度予測できるようになれば、その時間に合わせて装置を運用したり、回収作業を行ったりすることができるかもしれません。

つまり、
「たくさん回収できる装置をつくる」だけでなく、
「たくさん流れてくるタイミングを狙って回収する」。
そんな河川ごみ対策です。

一方、今回分析できたのは23日間です。
別の季節ではどうなるのか。雨の強さや、雨が降る前の晴天日数は関係するのか。まだ分からないことはたくさんあります。だからこそ、私たちは現場で実証を続け、データを積み重ね分析をしていきます。
装置を設置し、ごみを回収し、重さを量り、天候や川の状態を記録する。
一つひとつは地道な作業ですが、その積み重ねが、
「海へ流れ出る前に、いつ、どこで、ごみを止めるべきなのか」
という問いの答えにつながっていくと考えています。
一つの川で得た知見を、次の川へ

私たちが目指しているのは、一つの河川だけで完結する仕組みではありません。
日本の河川は、川幅、流速、水位変動、周辺の土地利用など、それぞれ条件が異なります。
だからこそ、まずは一つひとつの現場で実証を重ね、どのような条件で、どのような回収方法が有効なのかを整理していく必要があります。
その知見を蓄積できれば、将来的には河川ごみ回収装置「kawasemi」を、それぞれの地域の河川条件に合わせて展開していくことも可能になると考えています。

図4 「kawasemi」 は香川から次のステージへ

一つの川で得られた知見を、次の川へ。
一つの地域で得られた成果を、全国の河川へ。

海洋ごみ問題は、特定の地域だけで解決できる課題ではありません。
クリーンオーシャンアンサンブルは、現場で得られたデータと経験を積み重ねながら、各地域の行政、企業、研究機関、地域の皆さまと連携し、河川から海へ流れ出るごみを減らす仕組みを全国に広げていきたいと考えています。

まずは、目の前の一本の川から。

香川から始まった小さなプロジェクトが、やがて日本各地の河川でごみを止める仕組みにつながるよう、これからも実証と検証を続けていきます。

[1] Clean Ocean Ensemble. 海洋ごみMAP河川ごみ回収の最前線 ― 私たちが開発した装置とその可
能性について;
Clean Ocean Ensemble.https://cleanoceanensemble.com/columns/column4/(2026年9月6日閲覧).
[2] 工藤 功貴・片岡 智哉・二瓶 泰雄・北浦 郁弥. (2018). 平常時・出水時河川のマイクロプラスチック濃
度の時間変動特性と年間輸送量評価. 土木学会論文集B1(水工学), 74(4), I_529–I_534.
https://doi.org/10.2208/jscejhe.74.I_529
[3] Iwasaki, T., Ohya, I., & Miyama, K. (2026). Monitoring of macroplastic litter deposited on river
bars: A case study of the Toyohira River. 土木学会論文集, 82(16), 25-16044.
https://doi.org/10.2208/jscejj.25-16044
[4] Imbulana, S., Tanaka, S., Moriya, A., & Oluwoye, I. (2024). Inter-event and intra-event dynamics
of microplastic emissions in an urban river during rainfall episodes. Environmental Research, 243,
117882. https://doi.org/10.1016/j.envres.2023.117882

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